【事例10】未成年の相続人

10-1
夫の相続のことで相談があります。

先月夫が急逝しました。

私たちには子供が2人いるのですが、
長女は高校生で、長男は中学生と、
2人とも未成年です。

この場合、遺産分割協議書には
未成年の2人の子はハンコを押せるのでしょうか?

 
この事例のポイントを先に見る
 

未成年の押したハンコは有効か

ご主人が急逝されたとのことで、
心の整理がまだついていないと思います。

そんな中、相続手続きをしなければならず、
とてもつらいと思います。

今回の事例でも相続手続きで、
相談者と、2人のお子さんのハンコが必要ですが、
問題は2人のお子さんが未成年ということです。

印鑑証明書は、15歳くらいからでも出る市区町村もあるので、
もしかしたら、2人のお子さんも
印鑑証明書をつけられるかもしれません。

未成年の2人のお子さんが押した印は
有効なのでしょうか?

法律的には後から取り消しができる状態で、
とりあえずは有効なのですが、
実際は、未成年者がハンコを押した遺産分割協議書を持って行っても、
銀行で口座の名義を変える手続きはとおりませんし、
土地建物の名義の変更もできません。

現実は、未成年が押したハンコでは、
何もできないのです。

では、どうしたらいいのでしょうか?

家庭裁判所に「特別代理人」を立ててもらいます。

特別代理人も成年後見人や不在者財産管理人と同じく、
代わりにハンコを押す人です。

「特別代理人」になるには、特に資格は必要ありません。

成年後見人や、行方不明の時の不在者財産管理人と同じですね。

親族や知り合いに頼める人がいれば、
その人になってもらうことができます。
今回のケースでは相談者の
兄弟や、おじさん、おばさんで
なってもらえそうな人がいないかまず考えてください。
 

特別代理人はどんな責任がある?

特別代理人になると、
大きな責任を負うのではないかと心配かもしれません。

そのような心配はあまりする必要はないと思います。
家庭裁判所に特別代理人を立ててもらう時、
遺産分割協議書の案も出します。

その案のとおりの遺産分割協議書に印を押すのであれば、
特に大きな問題になることはありません。

もし、内容を変えるのであれば、
家庭裁判所に相談して、この内容で問題がないか、
確認してもらえば安心と思います。

相続の手続きは、
特別代理人が遺産分割協議書に実印で押印し、
特別代理人の印鑑証明書をつけます。

ですから、未成年者は印も押さないし、
印鑑証明書も不要です。
 

1人で、2人の特別代理人になれるか?

では、1人が、未成年者2人の
特別代理人になることはできるのでしょうか?

これは、できません。

特別代理人は、1人につき、
1人ずつ選任してもらう必要があります。

今回の事例では、2人のお子さんが未成年者ですから、
2人の特別代理人が必要です。

特別代理人になってもらう人を探すのが、
ちょっと大変かもしれませんね。

誰が特別代理人になるかは、
家庭裁判所はかなり意識します。

しかし、遺産分割の内容については、
それなりの理由があれば、
あまりうるさいことは言わない傾向にあるようです。
 

孫が相続人になるケース(代襲相続)

10-2
図を見てください。
未成年者が相続人に加わるよくあるケースは、
お孫さんが相続人になる
代襲相続(だいしゅうそうぞく)の時です。

親が亡くなり、親の相続手続きをする時、
先に子供(このケースでは長男)が
亡くなっている場合です。

この場合、2人のお孫さんが代襲相続人となり、
遺産分割協議書にハンコを押さなければなりません。

2人とも成人していれば問題はないのですが、
このようなケースでは
未成年者であることがよくあり、
その場合、ハンコが押せなくなります。

この事例では、
2人のお孫さんのために
特別代理人を選任してもらいます。

このケースでも、誰が特別代人になるか
ちょっと考えなければなりません。

お孫さんのお母さん(長男の妻)は、
どちらか一人の特別代理人になれますが、
両方にはなることはできません。

ですから、もう一人のお孫さんのために、
もう一人別の方から特別代理人に
なってもらう必要があります。

遺産分割協議は、
それぞれ言い分が対立する可能性があります。

もし、お母さんが2人まとめて特別代理人になると、
その2人の状況や言い分について、
「お手盛り」になる可能性があると
法律は考えます。

ですから、お母さん(長男の妻)は、
一方の子供の特別代理人になれますが、
もう一方の特別代理人は
誰か別な人(相続人以外で)に
なってもらう必要があるのです。

 

 

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