【事例11】お嫁さんに財産を残したい

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私は80代の女性です。
夫と長男に先立たれ今は、一人暮らしです。

長男のお嫁さんのA子さんとは
同居はしていませんが、
私を病院に連れて行ってくれたり、
買い物につきあってくれたりしてくれて、
とても感謝しています。

私のわずかばかりの財産ですが、
A子さんにも残してやりたいと思っています。

生前贈与も考えたのですが、
贈与税がとても高いらしく、
また、私がいざというときのために、
私が生きている間は、
お金は私の手元に置いておきたいです。

私には二男がいますが、
8年前に家を出て行ったきりで、
夫や長男の葬式にすら来ませんでした。

A子さんと長男の間には子どもがなく、
このままではA子さんに財産が行かないと聞きました。

何か、よい方法はないでしょうか?

 
この事例のポイントを先に見る
 

相談者が亡くなったら、誰に財産が行くか?

自分の財産を、誰かに残したいとき、
どうしたらいいのでしょうか?

自分の子どもなら、相続人ですから、
何もしなくても遺産の権利はあります。

しかし、今回のケースのA子さんは、
相談者の相続人ではありません。

A子さんと長男の間に子どもがいれば、
その子どもに遺産の権利がありますが、
残念ながらこのケースでは子どもがいないです。

つまり、A子さんには何の権利もないのです。
このまま相談者が亡くなると、
相談者の財産は全て二男に権利が生じます。

相談者はA子さんに財産を残したいと思っているのですから、
どのような方法があるでしょうか?

一つは、A子さんが相談者の子どもになることです。

つまり養子縁組をすることです。

しかし縁組みをした場合でも、
A子さんと二男で遺産分割協議を
しなければいけません。

そうすると、まず、二男と連絡が取れるのか、
という問題がありますし、連絡が取れたとしても、
遺産分割協議はスムーズに
行かない可能性が考えられます。

なぜなら、親や兄弟の葬式にも来ない人ですから。

それから、養子縁組は
相談者だけの考えではできません。

A子さんが縁組みに了解する必要があります。

したがって、養子縁組はハードルがちょっと高く、
しかもその後のトラブルも予想される方法かもしれませんね。

もう一つの方法は、相談者が遺言を書くことです。
遺言を書いておけば、A子さんに財産を残すこともできます。
 

遺言の作り方

では、遺言はどう作ればいいのでしょうか?

遺言の作り方には、一般的には2種類あります。

一つは全部自分の直筆で書く
「自筆証書遺言(じひつしょうしょいごん)」

もう一つは、公証役場で公証人から作ってもらう
「公正証書遺言(こうせいしょうしょいごん)」です。
 

自筆証書遺言

自筆証書遺言の書き方ですが、

  • 全部自分の手書き書く(パソコンは不可)
  • 自分の名前、日付を書き、押印する
    (認め印でもOK)

これだけです。
書くものは鉛筆でもボールペンでもいいですし、
封筒に入れても入れなくてもかまいません。

でも、どこにしまっておいたかを、
家族や知人に言っておいてくださいね。

なぜなら、自分が亡くなって、
いざ遺言が必要となったときに、
遺言があることを誰も知らなかった、
なんてことになりかねませんから。

また、なくさないように
遺言はしっかり保管しておいてください。
 

公正証書遺言の作り方

次に公正証書遺言の作り方ですが、
公証役場で作ります。

財産をどのように分けるかを公証人に伝えれば、
その内容で遺言を作ってくれます。

公正証書遺言を作るとき、
ちょっと大変なことがあります。

それは、証人が2人必要なことです。

この証人は、自分の子どもや配偶者、
財産をもらう人などはなることができません。

全く関係のない第三者でないとなれないのです。

この、証人を探すのがちょっと大変かもしれませんね。

著者である私も遺言を作るお手伝いをしていますが、
そのときは、私や、私の事務所のスタッフが
遺言の証人になることがあります。

証人さえ何とかなれば、公正証書遺言は、
公証役場で保管してくれますし、
最も確実な遺言です。

自筆証書遺言だと、相続人でトラブルがあるときは、
「その遺言は本物か?」
などと争われることもあります。

確実さを望むのなら、ちょっとお金はかかりますが、
公正証書遺言の方がおすすめです。
 

遺言には何を書く?

では、遺言には何を書いたらいいのでしょうか?

誰にどの財産を渡すかを書きます。

相続人や世話になった人、
場合によっては、施設や、団体、市区町村に
寄付をする人もいます。

例えばこんな書き方をします。

  • 私の全ての不動産は、長男 A男に相続させる。
  • 私の全て預貯金は、妻 B子に相続させる。
  • その他の財産は、長女 C子に相続させる。

 
個別に指定することもできます。

  • 以下の不動産は、長男 A男に相続させる。
    ○市○○町1234番の土地
    ○市○○町1234番地 家屋番号1234番の建物
  • それ以外の全ての不動産は、妻 B子に相続させる。
  • 以下の預貯金は長女 C子に相続させる。
    ○×銀行 ○支店 普通口座 1234567
    △○信用金庫 △支店 普通口座 7654321
  • それ以外の預貯金は、妻 B子に相続させる。
  • 株式会社○×の株式は 長女 C子に相続させる。
  • それ以外の財産は、妻 B子に相続させる。

 
代償分割のような書き方もできます。

  • 全ての財産は長男 A男に相続させる。
  • 長男 A男は、相続した財産から、
    金○○○万円を妻 B子に、
    金○○○万円を長女 C子に渡すものとする。

 
いかがでしょうか。
そんなに難しくないとお感じになられたと思います。

他に、ぜひ書いていただきたいことがあります。

それは、残された人に対する気持です。
こんな感じの遺言を書かれる人もいます。
どの財産を誰に渡すかを書いた後、

「○○さん、いつもお世話をしてくれてありがとう。

本当に感謝です。

いつも家族に支えられて、
私はとても幸せでした。

みなさんが、これを読んでいるときは、
私は黄泉の国に旅立っていますが、
夫との再会が楽しみです。

そちらの世界でも幸せに暮らしていきます」

 
このようなメッセージを
「付言事項(ふげんじこう)」といいます。

付言事項は、法的には何の効果もないですが、
書いてあると本当に心が温かくなります。

会社を経営されている方の、
付言事項の例です。

今回、私の会社の株式と不動産は、
長男に相続させることにしました。

これは、長男はずっと会社を
一緒にやってきてくれましたし、
後継者として、これからも会社を支えてほしいと
考えているからです。

会社には多くの従業員もおり、
その家族も考えると
とても多くの人の生活を支えています。

したがって、今後も会社を繁栄させていくことは、
地域の人々にとっても大事なことです。

そのことを理解してもらい、
これからも兄弟力を合わせて、
生きていってほしいです。

 

遺言は、自分が亡くなったときに備えるものなので、
ちょっと縁起がよくないものと感じられますが、
このような遺言を書かれると、
まさに家族やお世話になった人に
「遺す言葉」だな、と感じます。

このような遺言を読まれる家族も
本当に幸せだと思います。

付言事項に書く内容としては、
財産の分け方をなぜそうしたか、
理由を書くこともあります。

そうすると、遺された家族の
納得感も違ってくると思います。
 

遺言を書くときの注意点

遺言を書くときの注意点があります。

次の2点です。

  • もらえない人がいる場合
  • 自筆証書遺言が無効になるケース

もらえない人がいる場合とは、
今回の事例では二男のことです。

例えば、相談者が
「全ての財産はA子さんに渡します(遺贈します)」
という遺言を書くとどうなるでしょうか?

二男は、財産がもらえるという期待があったとしても、
それが裏切られることになります。

そこで、民法では、
A子さんに全部渡すという遺言があっても、
二男も少しはもらえるよう請求できる権利を作りました。

これを「遺留分(いりゅうぶん)」といいます。

例えば、相談者(遺言を書く人)に
不動産や預貯金を全てあわせると
1000万円分の財産があったとします。

遺言がないときは、
二男は1000万円分まるまるもらえるわけです。

しかし、遺言によりもらえなくなるのですが、
その場合でも遺留分は法律上の自分がもらえる予定の
半分の権利を認めています。

したがって二男には500万円分の権利があるわけです。

二男がいつか現れ、
遺留分を請求するとけっこう大変です。

A子さんは遺留分を請求されると、
500万円をお金で払うか、
相続した財産で払わなければいけないからです。

これを防ぐために、
遺言で二男にも少しは財産を残しておいた方が
いいかもしれません。

他には、付言事項でなぜそのような遺産の分け方をしたのか
その理由を説明しておくのもいいでしょう。

法的には効力はないですが、
気持ちの面で遺留分の請求はしづらくなるかもしれません。

遺留分の請求があり、裁判まで発展すると、
とても大変なことになりますし、
兄弟の絆も大きく壊れて修復も難しくなると思います。

遺言を書くときは、
遺留分の請求をされないように工夫が必要です。

 

 

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