私は60代女性です。 今度は、このたび母が亡くなりました。 「自分の権利は1/2あるはずだ。 母には自宅の他に、預貯金などのお金はほとんどありません。 一方で、私の夫は協力的で、 兄と自宅を2つに分けるなんて現実的はありません。 |
遺産の分け方は、相続人が合意すればどのように分けても自由です。
一人が全部もらって他はもらわないという方法でもいいですし、
相続人全員で均等に分ける方法でもかまいません。
相続人がそれぞれ自分の権利分はほしいと主張しても、
自宅しか財産がなかったらどうしたらいいのでしょうか?
お金なら分けようはありますが、
家を2つに分けるなんて現実的ではありませんね。
法律は一応、そのような時も想定しています。
実際に使う、遺産分割協議書も、法律が想定している分け方を
意識して書きます。
法律が用意した分け方は、次の3とおりです。
- 遺産をそのまま分ける方法・・・現物分割(げんぶつぶんかつ)
- 遺産を売ってお金で分ける方法・・・換価分割(かんかぶんかつ)
- 遺産をもらった人がお金を払う方法・・・代償分割(だいしょうぶんかつ)
一つずつ、説明します。
遺産をそのまま分ける方法・・・現物分割
自宅はAさん、預貯金はBさんという分け方です。
それぞれの財産につき、誰がもらうか決めます。
1区画の土地(1筆の土地)なら、
境界線を入れて、2区画の土地に分けて(分筆)して
それぞれがもらう、という分け方になります。
不動産の他に預貯金などがある時、
不動産はAさんがもらうけど、
預貯金はBさんがもらうという分け方ができます。
相続人が納得していれば、
不動産と預貯金が同じくらいの価値である必要はありません。
最も典型的な分割方法といえるでしょう。
今回の事例では、この方法は難しそうですね。
自宅を2つに分けわけにはいかないですから。
それから、自宅をお兄さんと1/2ずつ
2人の名義の共有にする方法もあります。
しかし、共有にする方法は、将来的にお兄さんや相談者に相続が生じると、
権利が複雑になりますので、
いつかはどちらかの単有名義にした方がいいと思います。
遺産を売ってお金で分ける方法・・・換価分割
遺産を売却してお金に代えて、そのお金を分ける方法です。
財産が不動産しかなく、
しかもその不動産を誰もいらない時は、
このような分け方にする場合もあります。
今回の事例では、
相談者は今後も引き続き自宅に住みたいでしょうから、
この方法は避けた方が良さそうですね。
遺産をもらった人がお金を払う方法・・・代償分割
この財産をもらう代わりに、
もらえなかった人にお金を支払う方法です。
遺産が自宅の土地建物しかなく、
一人がその自宅をもらう場合、
もらえなかった他の相続人にその分のお金を支払います。
その人の権利を買い取る形です。
今回の事例では、相談者のご主人が、
お金なら何とかなると言ってくれているので、
この方法が良さそうです。
いくら払うかは、お兄さんと相談になります。
例えば、自宅を売却した場合1000万円くらいにはなりそうなら、
お兄さんの相続分は1/2ですので、
500万円をお兄さんにお支払いすることになるでしょう。
しかし、いくらで売れるかはとても難しい問題なので、
お兄さんとよく話し合う必要があると思います。
では、もし、相談者がお金を用立てることができなかったら
どうしたらいいのでしょうか?
一概には言えませんが、例えば、自宅は相談者がもらい、
お兄さんに支払うお金を分割払いで
払っていくということも考えられます。
しかし、事前に用意すれば、
そのような時にも対処する方法があります。
他の相続人に支払うお金を用意する方法
次の図のように、
お父さんが会社のオーナーであったり、
評価の高い不動産をお持ちの一方で、
現金があまりない場合があります。
跡継ぎとして長男を考えていたとして、
将来お父さんが亡くなられたときに、
長男一人がお父さんの会社や不動産を受け継いだ場合、
他の兄弟から自分の権利分はほしいと言われたら
どうしたらいいのでしょうか?
家や会社を売却してお金を用意する、
なんてことは多くの場合、避けたいでしょう。
実は、事前に準備することにより、
お金を用意する方法があります。
これも保険を活用します。
右の図のように、
お父さんを被保険者、
跡継ぎである長男を保険金の受取人として、
保険に加入します。
このようにすれば、
将来お父さんが亡くなったときに、
長男は不動産や、会社を受け継ぎ、
財産をもらえなかった、長女や二男には、
保険金で代償のお金を支払うことが可能です。
お父さんとしては、子供を平等に扱いでしょうから、
保険金の受取人を3人それぞれにして、
保険に加入しておきたいかもしれません。
しかし、そうすると、
後を継ぐ人が受け取る保険金が少なくなって、
代償のお金に不足する場合も出てくるかもしれません。
ですから、保険の受取人はあくまでも
跡継ぎにしておきましょう。
このように、
財産が会社や評価が高い不動産しかなく、
後を継ぐ人に残せるお金が少ない場合は、
保険を活用することも一つの手だと思います。
さらに、遺産分割のトラブルを避けるためにも、
遺言は書いておけば、ベターだと思います。
このように、事前に準備しておけば、
後で残された人が困らないようにすることもできます。
これも、家族に対する愛情の一つでしょうね。
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