自分の直筆で遺言(自筆証書遺言)を書かれる場合は、
特に注意してほしいことがあります。

それは日付です。
 

私は80代の女性です。

先日、私の夫(85歳)が亡くなりました。

私たちには子どもがいません。

夫の財産は夫名義の自宅と、預貯金があります。

夫は自筆で遺言(自筆証書遺言)を書いていてくれました。

夫が亡くなった後、
夫の口座を解約しに銀行に行ったら窓口の人から
「この遺言は使えないから相続人からハンコをもらってください」
といわれました。

聞くと、遺言の日付の書き方が
「平成18年7月吉日と書いてあって、
日付まで書かないとダメだ」
とのこと。

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夫の相続人は何十人もいます。

こんなちょっとしたところがダメなだけで、
何十人からハンコをもらわなければいけないのでしょうか?

 
この事例のポイントを先に見る
 

自筆証書遺言は日付に注意

もう一度、自筆証書遺言のポイントを確認しましょう。

  • 全部自分の直筆で書く(パソコンは不可)
  • 自分の名前、日付を必ず書き、押印する
    (認め印でもOK)

今回、問題となったのは、日付の書き方です。

「平成18年7月吉日

この日付の書き方はどうでしょうか?

とても残念ですが、この書き方はいけません。
「平成18年7月10日」と、
日にちまで書かなければいけないのです。

この日の部分を「吉日」と書いたために、
残念ながらこの遺言は無効です。

これはどうしようもありません。

自筆で遺言を書かれる場合は、
気をつけていただきたいです。

氏名を書き忘れることはないでしょうが、
印鑑も必要なので、気をつけてください。

今回のケースでは、
お二人の間にお子さんがいらっしゃらないとのこと。

両親も亡くなられているようですので、
相続人は兄弟になります。

ご主人は85歳でしたので、ご兄弟も高齢でしょう。

そうすると兄弟も亡くなられていることもあり、
その場合、その更にお子さんが相続人になります。

ご主人が亡くなられた後に、
相続人で亡くなられた方がいると、
その配偶者やお子さんが相続人になります。

そうすると、相続人がねずみ算式に増えてしまいます。

遺言が無効ですので、とても残念ですが、
相続人の全員から
遺産分割協議のハンコをもらう必要があります。

私が経験したケースでは、
自筆証書遺言で日にちが書いてなくて無効になり
相続人が70人いたことがありました。

その方は、2年かけて相続人全員からハンコをもらいました。

全員からハンコをもらうのは本当に大変だったと思います。

たった一言、遺言の日付を「吉日」と書いてしまったために、

こんな事になることもあります。

自筆証書遺言は、簡単にかける点がメリットですが、
書くときは十分注意していただきたいです。

できれば、専門家に一度チェックしてもらった方が
安心と思います。