09-1
私は60代の女性です。先日私の父が亡くなりました。

父名義の土地や建物、預金口座や投資信託があり、
あわせると5000万円くらいにはなりそうです。

相続手続は初めてなので、私の友人に聞いたら、
「母、私、弟の実印と印鑑証明が必要では」とのこと。

弟は若いとき多額の借金を作り、
今ではどこにいるかわかりません。

当然、連絡も取れません。

たぶん、どこかで生きているとは思いますが。。。

このような状態でも、
銀行手続や土地建物の名義変更の手続には
弟の実印や印鑑証明も必要でしょうか?

 
この事例のポイントを先に見る
 

相続税はかかる?

亡くなったお父さんの遺産は、
合わせると5000万円くらいとのこと。

そうすると、相続税が心配です。

では、遺産がどれくらいあると相続税がかかるのでしょうか?

今回の事例では、遺産をお金に換算して、
8000万円を超えると、相続税がかかります。

ですから、相続税はかからない可能性が高い。

相続人が
1人なら6000万円、
2人なら7000万円、
3人なら8000万円を超えると
相続税がかかります。

では5人なら?

1億円を超えると相続税がかかります。

5000万円+(1000万円×相続人の数)

この計算式で算出した金額以上に遺産があると、
相続税がかかることになります。

しかし、平成27年1月1日以降に亡くなられると、
この金額が変わります。

相続人が
1人なら3600万円、
2人なら4200万円、
3人なら4800万円。

3000万円+(600万円×相続人の数)

という計算式に変わります。

つまり、より多くの人に
相続税がかかることになります。

相続税については、
いろいろ複雑な部分があります。

一般的な感覚では、
この程度の知識があればいいと思います。

これは相続税の本ではないですし、
私は税理士ではないので、
正確なことを知りたい場合は、
税理士さんに相談することをおすすめします。

相続税については、
市街地に農地がある場合は注意が必要です。

農地は固定資産税の評価額はとても低く抑えられています。

しかし、相続税の計算はあくまで「時価」で考えます。

市街地にある農地は、固定資産税の評価額が低くても、
時価ではとても高い場合があるからです。

時価はわかりにくいので、
税務署は「路線価」や「価格倍率表」といって、
すぐに土地の価格を算出するための基準を用意しています。

市街地の農地では、
この路線価や価格倍率表での価格と、
固定資産税の評価額と比べると
10倍、20倍になるケースがよくあります。

ですから、市街地に農地がある方の相続税については、
土地の評価に強い税理士さんに、
相談することをおすすめします。
 

弟のハンコをどうするか

ちょっと話がそれましたので、話を元に戻しますね。

父さんの遺産が、
土地建物、預金口座、投資信託で
お金に換算すると5000万円くらいあるとのこと。

人情としては早く相続手続をしたいと思います。

土地建物の名義を変えるにも、
預金口座や投資信託の名義を変えるにも、
遺産分割協議書が必要です。

しかも印鑑証明書つきで。

弟さんは行方不明でハンコの押しようがありません。

この場合、弟さんのハンコはどうすればいいのでしょうか?

このようなケースでは、
家庭裁判所に代わりにハンコを
押す人を立ててもらうことができます。

その人のことを「不在者財産管理人」といいます。

この不在者財産管理人になるには、資格はいりません。

誰でもなることができます。

お知り合いや親戚で信用できそうな人に頼んで、
不在者財産管理人になってもらえばいいのです。

家庭裁判所には、「この人が候補者です」といって
申し立てをすれば、大きな問題がない限り、
その人を不在者財産管理人に選任してくれるでしょう。

行方不明の弟さんにかわって、
家庭裁判所から選任された不在者財産管理人が、
遺産分割協議書に押印します。印鑑証明書も、
不在者財産管理人の個人の印鑑証明書をつけます。

遺産分割協議の内容は、
弟さんが戻ってきたことに備えて、
弟さんの相続分(事例では1/4)は
残しておくような内容にしておく必要があります。

ですから、弟さんが万が一、戻ってこられた時は、
お金を渡さなければならないですから、
遺産を全部使ってしまわないように、
気をつけてくださいね。